なぜ、空き家管理が必要?


・空き家は増え続けている

空き家の総数は令和5年時点で900 万戸(平成30 年時点で 849万戸)あり、そのうち、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は 385万戸(平成30 年時点で 349 万戸)となっており、いずれも増加傾向にあります。

また、空き家は私有財産であり、その管理は空き家の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)が自ら行うことが原則です。空家等対策の推進に関する特別措置法(平成 26 年法律第 127 号。以下「空家法」という。)第5条においては、「空家等の所有者等の責務」が規定され、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する施策に協力することが、所有者等の責務として位置づけられています。令和5年 12月に施行された改正空家法においては、周囲に悪影響を及ぼす前の段階から空き家の有効活用や適切な管理を確保するための措置が盛り込まれ、所有者等は、周囲に悪影響を及ぼす前の段階から空き家を適切に管理することが求められています。

空き家は不具合の発生が発見されにくいことから、傷みが早く進行する傾向にあり、適切な管理を行うには、一定の頻度で点検を行うとともに、空き家に破損等が見られる場合にはその修繕等を行うことが必要です。空き家の発生後できるだけ早い段階から適切な管理を行うことで、資産価値をできる限り保全し、流通・利活用に適した状態を維持することができます。

 

1 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果(総務省統計局)

2 令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)



・空き家管理を任せる意味

不動産管理業者である当社は、不動産取引の専門家として豊富なノウハウを有しています。不動産について様々なニーズに応じて適切なアドバイスを提供するともに、適切な管理・流通・利活用等のサービスをワンストップで提供することができます。

また、当社は、空き家に限らず、物件調査や相続手続、価格査定、売買・賃貸の仲介など、空き家の発生から利活用まで連続的にサービスを提供するノウハウに優れており、地域の空き家の管理を担いつつ、所有者様に寄り添いながら空き家の流通・利活用の道筋を見出し、そのノウハウを生かして適切な流通・利活用を実現することができます。地域課題の解決はもちろん、地域づくりやコミュニティづくりの取組につなげていくこともできます。

不動産業は、様々な活動の基礎となる人と人との交流を促し、まちのにぎわいを確保する「場」を創造し、活用を促しています。



・空き家とは?

①居住等の目的に使用されていない建築物又はこれに附属する工作物

②居住等の目的に使用されていない区分所有建物の専有部分(いわゆる「空き室」)を「空き家」と呼称しています。

 

【空き家の例】

・居住者が死亡したことにより使用されなくなった戸建て住宅

・使用されていない倉庫や物置など住宅ではない家屋

・区分所有者の海外赴任等により空き室となっている分譲マンションの専有部分

 

また、空き家の管理を行う作業は、原則として空き家及びその敷地(立木等を含む。)をその対象とし、本来所有者等が自ら行う日常的な管理(一定の頻度で点検を行う、定期的に通気や換気等を行う等)を、所有者等に代わって行うことを想定しています。ただし、必要となる作業の内容は、空き家の状況や所有者様の事情により異なるため、所有者様の意向により、外観目視による点検のみを委託することも考えています。なお、区分所有建物の専有部分について管理に係る作業を受託する場合については、当該区分所有建物の敷地については管理対象に含まないことを想定しています。

なお、空家法に規定する「管理不全空家等」及び「特定空家等」として既に市町村長の指導・勧告の対象となっている空き家や、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしている空き家は、対象として想定していません。こうした空き家は、まずはその悪影響に関連する要因を速やかに排除することが必要と考えられるためです。また、腐朽・破損などにより著しく状態の悪い空き家も、空き家の管理を安全な作業の遂行が困難と考えられるため、管理対象として想定していません。

3 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(平成13年国総動第3号)



・空き家管理について相談・依頼

【ケース①】 (空き家の管理に係る相談)

空き家についてどうすれば良いか分からない・決められない状態で、空き家の管理について、相談したい。

(例)

・相続により実家である空き家を取得したが、とにかく何から始めて良いか分からない。

空き家の管理を適切に行うために行うべきことについて、不動産業者に相談に乗ってほしい。

 

【ケース②】 (建物内への立ち入りを伴わない作業を依頼)

家財の片付けの傍ら一定程度管理に係る作業を行うものの、近隣の生活環境への悪影響を防止するため、空き家の管理に係る作業(外観目視による定期的な点検や敷地内の立木の確認等)を依頼したい。

(例)

・相続により実家である空き家を取得したが、家財や荷物の整理ができておらず第三者が建物内部に立ち入ることに抵抗がある。一方、近隣の生活環境への悪影響を与えることは防止したいため、建物内部には立ち入らず、建物の施錠がされているか、立木の越境がないか等を定期的に確認してほしい。

 

【ケース③】 (建物内への立ち入りを伴う作業を依頼)

所有者様が遠隔地に居住している等の理由により、所有者等が自ら管理することが困難であるため、所有者等に代わって日常的な点検及び修繕を依頼したい。

(例)

・相続により実家である空き家を取得したが、所有者等は遠隔地に居住している状況。将来的な流通・利活用を見据え、流通・利活用に適した状態をできるだけ維持したいので、空き家の管理を委託したい。

・自身が所有する空き家の売却について宅地建物取引業者と媒介契約を締結した。買い手が見つかるまでの間、当該空き家の管理を委託したい。

・海外に赴任することになり一定期間不在とせざるを得なくなった。不在となる期間における空き家の管理を委託したい。



・空家法(放置すると税金で不利)

空家法においては、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」を特定空家等、「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等」を管理不全空家等と定義しています。

空家法第22 条第1項及び第2項の規定に基づき、市町村長は特定空家等の所有者等に対し、周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言又は指導をすることができ、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、必要な措置について勧告することができることとされています。また、同法第 13条第1項及び第2項の規定に基づき、市町村長は管理不全空家等の所有者等にし、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができ、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、具体的な措置について勧告することができることとされています。

また、空家法に規定する管理不全空家等又は特定空家等の所有者等が、市町村長から上記の勧告を受けた場合、当該空き家の敷地が固定資産税の住宅用地特例の対象外となる旨の措置(地方税法(昭和25年法律第226号)第 349条の3の2)が存在します。空き家の管理を第三者に委託したとしても、管理を受託する空き家の状態によっては、所有者等に経済的な不利益が生じる可能性があることについて、まずは所有者等が十分認識しておくことが必要です。

空家法第6条第2項第3号に基づき、同号に規定する「所有者等による空家等の適切な管理について指針となるべき事項」(以下「管理指針」という。)が策定されています。管理指針においては、「所有者等は、空家等が管理不全空家等や特定空家等とならないよう、一定の頻度で点検を行うとともに、空家等に破損等が見られる場合にはその修繕等を行うことが必要」であり「事象の発生を予防するためには、定期的に通気や換気等の管理を行うことが求められる」と記載されています。そのため、所有者等が、管理指針に記載されている内容についてよく理解しておく必要があることはもちろんですが、管理対象となる空き家が管理不全空家等や特定空家等とならないよう、管理指針に記載された点検対象となる事象を意識しつつ、当該事象やその兆候が生じていないかを確認することが必要です。

 



参考文献:国土交通省 不動産・建設経済局